「回想法」というのは、自分自身の昔の体験や経験を語り合ったりすることで、いきいきとした自分を回復しようとする心理学的な手法の一つとされています。
近年、この「回想法」は、高齢者の認知症予防や改善のために使用されるだけでなく、高齢者の社会参加や、世代を越えての交流のための手法としても注目されています。
また、民俗学と「回想法」の関連も、たとえば六車さんらが提起してきました。
私たちの「昔語りの会」では、お年寄りのみなさんの貴重な体験を共有し、世代間での豊かな交流を促進するための手法として、この「回想法」が有効だと考えています。
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高齢者に対する心理的援助法の一つとして、回想法は現在、幅広い職種に用いられている。1960年代にアメリカの精神科医Butler は、高齢者の回想が自然に起こる心理的過程であり、パーソナリティーの再統合へと導くような積極的な役割を持つことを示し、回想法を提唱した。これを契機として、欧米でさらには日本でも回想法の臨床と研究が広く行われるようになり、認知症を有する高齢者への実践、介護予防プログラムの活用、在宅の健康な高齢者への適用、世代間交流等、対象が多様となり、地域における実践へと広がりを見せている。
高齢者の心理的支援においては、長い歴史を持つ人生の先達として高齢者を尊重し、これまで培ってきた人生の歴史、生活、文化的価値に関心を持ち理解することが重要な鍵となる。また、高齢者が生きてきた社会の出来事(戦争や災害など)や地域の生活文化に注目する必要がある。
(長野恵子ら、2012「回想法による「神埼の想い出ブック」作成のプロセス―神埼地域における高齢者の生活史作成の試み ―」『西九州大学健康福祉学部紀要』43号、89-98。)